フードシステム論研究室で何を学ぶか
ゼミの学習テーマ 輪読文献 フィールドワーク調査
ゼミの学習テーマ
1.統一テーマ”持続可能なフードシステム”
近年、これまでにない規模の災害が毎年のように発生し、社会に甚大な被害をもたらしています。
そのため、これまで環境に無関心だった人も含めて多くの人が環境破壊の影響が身近に及んでいることを
痛感していることでしょう。環境破壊が自然、社会、生命にもたらす影響は決して瑣末なテーマではなく、
正面から直視しなければならない最重要テーマなのです。
社会や経済も少しずつではありますが、変化しつつあります。たしかに、経済と環境は対立する事項
として理解される傾向は未だに残っているかもしれません。ただ、それでは現在抱えている諸問題を
解決することが困難であることもまた事実です。環境保全を前提としてうえでの経済活動という発想
が不可欠です。
当然ですが、農と食もそのような変化の影響を受けています。求められるのは生産第一主義からの脱却
です。農業生産から環境中に排出される様々な有害物質や膨大な食品ロス、各種廃棄物に関しては抜本的
な追加措置が必要です。加工食品の食品添加物や家畜に投与される薬剤も再考することが必要です。環境
や消費者の健康への影響を起点にする商品開発こそが今後の農と食における成功のカギとなるでしょう。
このような考え、その考えに基づいた具体的な行動が、欧米では急速に拡大しています。環境に関する
各種規制が強化され、他方では地域内あるいは国際的な認証制度が盛んに導入されています。その影響も
あり、有機食品市場は急速に拡大するという非常に興味深い状況が進行しています。国内とは対照的です。
当研究室では、以上のような現状を受け止めて、「持続可能なフードシステム」という大きな枠組み
を設けて、その中で学生が自身の問題意識を熟成させながら、書籍の輪読やフィールドワーク調査をおこ
なっています。調査の結果については、毎年外部の論文コンテストに投稿しています。大学教育は、問題
意識を持ち、主体的に調査を実施して、最終的に自分の手で文章でまとめることにあります。当ゼミでは、
そのような大学教育を実践しています。
2.具体的に何を学ぶのか
(1)輪読
輪読は、フィールドワーク調査と連動します。最初にミクロ経済学の簡単な復習をしたうえで、基本
的な文献を2冊読み、環境に優しい農産物の生産から流通・販売までを勉強をします。当HPの「輪読文献」を 参照して下さい。当ゼミでは農業生産も重視していますが、他方「どのようにすれば販売を促進できるのか」、
「どのような流通の仕組みが必要なのか」、「生産・販売活動と環境・安全をどのように両立させるか」と
いう問題意識を持ち、販売等の分野にも重点をおいて勉強しています。
基本文献以外については、フィールドワーク調査に関連する書籍を選択しています。具体的にはゼミ生
のリクエストの中から話し合いで決めています。教科書として使用しない場合でも、関連する書籍を積極
的に購入しています。
(2)フィールドワーク実習
フィールドワーク実習では、実際にゼミ生が「持続可能なフードシステム」の枠内で具体的なテーマを決
め、それに沿って現地調査を実施しています。従いまして、ゼミ入室時には調査テーマや調査地は決まって
いません。基本的には、一定の条件下でゼミ生が主体的に決めます。
フィールドワーク実習の成果については、希望すれば論文に仕上げて外部の論文コンテストに投稿しています。
調査地は、移動が便利な関東及びその周辺地域と遠隔地の両方で実施します。基本的には、複数回調査が可能で ある関東地域及びその周辺地域を主な調査地としてしています。遠隔地調査は関東地域の事例と比較するために 実施しています。
これまでの調査地・調査対象団体等は、本HPの「研究室活動~フィールドワーク実習(調査訪問先)」
を参照して下さい。また、フィールドワーク実習を実施するためには周到な準備が必要です。準備について
は、「フィールドワーク調査」を参照して下さい。
(3)習得して欲しいこと
①作品としての論文
大学の勉強は、「自分で作品をつくる」点に最大の特徴があります。他人の書籍や論文からの引用で素晴
らしい文章を書いたとしても、それは「レポート」であって、「論文」ではありません。大学生が最終的に
仕上げるのは「論文」であり、それは小さくても「作品」です。芸術家が全身全霊を傾けて生み出す「作品」
と同じです。
「論文(作品)」と「レポート」を区別するものは、独創性です。具体的には、オリジナルなテーマの
設定であり、独自の視点、アプローチの仕方等です。もちろん、大学生ですので目の覚めるようなオリジナ
リティを求めることはありません。学生の皆さんに期待したいのは「どんなに小さくともキラリと光る」
独創性です。そのために、頭を抱えて悩み、苦闘してもらいたいと考えています。
➁協同作業と独創性
独自性を生み出すためには、個人の苦闘だけでは不十分です。一人苦悶して素晴らしいアイデアを生み出
すことを求めることは酷です。個人の奮闘だけではなく、それに加えて他人と積極的にコミュニケーション
をとることが不可欠です。ゼミにおける積極的な議論など、コミュニケーションの中からアイデアは生み出
されると考えます。ブレインストーミング等を駆使して、互いに刺激し、触発することが最も脳を活性化さ
せる方法です。
そのため、ゼミでは3年生のフィールドワーク実習の準備とその実施や論文の執筆は、少人数の班単位でお
こないます。その中で濃密な議論をおこない、また協同作業をおこなう中からアイデアが生まれ、アイデア
に基づいた調査を効率的にかつ効果的に実施することができます。
このような経験は社会に出てから生きてきます。社会人として働き始めると、仕事は基本的には協同作業
です。職種にもよりますが、個人で完全に仕事を完結させることは困難です。一人の天才が斬新なアイデア
を出し続けることは稀です。重要なのは、いかに互いに触発し、刺激し合い、協力できるかだと考えます。
そのための経験をゼミで積んでほしいと願っています。